Salom!(ウズベク語で「こんにちは!」)
今回はウズベキスタンの人種構成、というテーマ通り、ウズベキスタンには実際どんな民族の人がいるのかを解説していきます。
この記事を開いてくれた皆さんは、ウズベキスタンに住む人は何人だと思いますか?
もちろん、すぐに出てくる回答は「ウズベク人」だと思います。
とはいっても、実はウズベキスタンに住んでいるのはウズベク人だけではありません。
ウズベキスタンは、ユーラシア大陸中央に位置する国で、歴史的に人の往来が盛んな国でした。そのため「ウズベキスタン」と一括りに言っても、そこで生活する人が「ウズベク人」であるとは限りません。旧ソ連であったことからロシア人や、近隣のタジク人、カザフ人などもいます。タシケントはその人種の多さから「人種のるつぼ」と呼ばれています。
そんな「人種のるつぼ」とまで言われるほど、たくさんの人種の人々が生活するウズベキスタンの人種構成について解説していきます!
国としての人種構成
外務省基礎データによると、ウズベキスタン国内の人種構成は以下のようになっています。(2021年:ウズベキスタン国家統計委員会参照)
ウズベク人 | 83% |
ロシア系 | 2.1% |
タジク系 | 4.9% |
カラカルパク系 | 2.2% |
カザフ系 | 2.4% |
主要民族はウズベク人で、全体の8割以上を占めます。残りの約20%の人々が、ウズベク人以外の人種になります。
ウズベキスタンの人をランダムに10人集めた時、8人はウズベク人で残りの2人が他の民族という感じです。
そもそも「ウズベク人」とは?
先ほどの章で、国としてウズベク人が8割以上を占めているのは分かったと思います。
では、そもそも「ウズベク人」とはどこにルーツをもつ民族なのでしょう?
「ウズベク」という名前は、14~16世紀にモンゴル系のキプチャク・ハン国内にいた遊牧民全体を「ウズベク人」と呼び始めたことに由来すると言われています。
しかし、現在のウズベク人は、自らのルーツをこの時代の遊牧民ではなく、古代にアム川とシル川の間のオアシスで定住し農耕をしていた人々だと考えています。
とはいえ、イラン系・トルコ系・モンゴル系・そしてロシア系の王朝が代わる代わる支配してきたこの地域では、異なる民族同士の結婚が当たり前なので、現在のウズベク人が昔の起源をそのまま保っているとは考えにくいです。ほとんどの人が混血になっています。
現在の「ウズベク人」という呼び方は、20世紀に行われたソ連の民族政策「中央アジア民族別国境画定」による影響が大きいです。
このとき、イスラーム教徒として各都市や部族で異なるアイデンティティーを持ち、きわめて多様であったテュルク系民族が「ウズベク人」として統合されました。
出典:外務省
各都市の民族構成や民族としてのアイデンティティーを無視して人為的に策定した国境だったため、その不整合さは今の各都市の民族構成にも表れています。
町ごとに民族構成は違います
先ほど触れたように、ソ連が策定した国境が今の国境にも反映されているので、町によっては所属する国と、その民族アイデンティティがねじれている場合があります。
ここでは、それぞれの町ごとに民族構成の特徴を紹介していきます!
☆タシケント
この記事の最初で述べたように、タシケントは「人種のるつぼ」と言われるくらい、多様な民族の人が生活しています。
特に私がタシケントに行ったときに感じた感想は「ロシア人が多い!」です。エリアによってはウズベク語が通じず、ロシア語でしか会話ができない場所などもありました。
☆サマルカンド・ブハラ
実はこの2つの町は、民族的にはタジク人が多い町です。ソ連時代の国境策定の時にウズベキスタンに組み込まれただけで会って、本来はタジク人の町と言ってよかったのかもしれません。
現在も、自分はウズベキスタンで生まれたウズベク人だけれども、両親や祖父母がタジキスタン出身、という人とよく会います。
そのため、この2つの町ではタジク語話者が非常に多いです。「ウズベク語・ロシア語・タジク語」の3言語を使う人もかなりいる印象です。
☆カラカルパクスタン共和国
この記事を読んでいる皆さんは、ウズベキスタンの西にある自治共和国・カラカルパクスタン自治共和国をご存じでしょうか?
自治共和国とは「独立国の中に設けられる地方自治政体のうち、通常の州・地区・県・市などに比して広汎・高度の自治権を付与される「国家内国家」の一形態の呼称」のことです。
簡単に言うと、ウズベキスタンという国の中にカラカルパク人が自治を与えられた国があるということです。
詳しくは「ウズベキスタンの自治共和国・カラカルパクスタンとは?」で解説していますので、こちらをご覧ください。
ここは、ウズベク人と同じテュルク系民族「カラカルパク人」が多く住んでいます。
※「カラカルパク」はカラカルパク語で「黒い帽子」と言う意味です。
とはいっても、人種構成は以下の通りで、今はカラカルパク人と同じくらいウズベク人も住んでいます。その他カザフ人やトルクメン人も他の地域に比べて、比率が高いです。
カラカルパク人 | 31.1% |
ウズベク人 | 31.5% |
カザフ人 | 26.9% |
トルクメン人 | 5.4% |
ロシア人 | 2.3% |
以上のように、ウズベキスタンと一括りに言っても、その町によって受け継がれてきた民族アイデンティティもかなり違いますし、人種構成もかなり違ってくることが分かります。
まとめ
いかがだったでしょうか?日本人にとっては馴染みがないことですが、ぜひウズベキスタンの人と話すときは、(仲良くなった後に)その人の民族アイデンティティについて話してみてください!日本人とはまた違った考え方を発見できて面白いかもしれません!